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教育の溶解(メルトダウン)

教育の溶解(メルトダウン)


毎年2月末にある小さな家庭的な温かさが溢れるファッションショーに招かれている。KOTO COLLECTIONという。高等課程、専門課程の生徒がこの1年間の授業で積み重ねてきた知識、技術をまとめ「服」という形に表した、とプログラムに書かれている。66回目になる今年の作品名をいくつかあげてみると
(1)制服 (2)デニム・ツーピース (3)ブラック・スーツ (4)ニット・ワンピース (5)ジャンパースカート 
(6)フォーマルワンピース (7)自由作品 (8)イブニングドレス (9)ウエディングドレス
等々で、実際はこの倍ぐらいの作品数である。
cover01

自分で作った作品を、自ら身にまとい発表する1年に1回の会で、発表者は高校生から二十歳くらいまでの女の子である。「苦しいときもあったけれども一生懸命作りました」という最後の挨拶があったとき、一人ひとりによく頑張ったね、と言ってあげたかった。
menu


発表会を観ながら、何故か、オルダス・ハックスリーの『すばらしい新世界』という文明論的SF小説の中に

「わたしたちは古い着物はいつも捨てる。繕うより捨てる方がましだ、繕うより捨てる方がましだ」


と、眠っている子供たちに暗示をかける場面があるのを思い出していた。今、このファッションショーの舞台に立っている子たちは、一枚の布から自分がまとうものを作り上げる知識と技術を身につけてきたのである。遊びたい気持ちを抑えたこともあったであろう。上手くいかずに投げ出したくなったときもあっただろう。1年間の努力の結晶がこれらの作品である。世界に二つとない、唯一無二の作品である。この日をいつまでも大事に忘れないで育ってほしいと、こみあげるものを感じた。

アーノルド・トインビーは、「創造力の喪失が文明の衰退へと進んでいく」と言った(「文明の衰退」)。
テレビをほとんど見ない私でさえ、「…48」とかいうグループのことは何となく知るようになったが、(ファンの方には申し訳ないが)48人でやっと一人前の女の子を大の大人がちやほやする末期的現在。であるが故に、この舞台に立っている輝いて見えるこの子たちには心から拍手を贈ってあげたかった。

歯を食いしばって自分で何かをつくりあげるということとは対極の、安易にお金を得ることにエネルギーを費やす大人が如何に多いことか。
koto01

人生のなかで、ある期間は、歯を食いしばって打ち込む必要があると言わない学校、教師、大人。
言わないどころか学生・生徒を「お客」のように扱い、彼ら学生・生徒に迎合することが優先されてきてはいまいか。教育もメルトダウンしていると危惧するのは遅すぎるかも知れない。が、それでも言い続けなくてはならないだろう、大人が、教師が、知識人が、マスコミが。
しかし、現実は目を覆いたくなる「先生」の発言で溢れている。最近大いに気になった例を一つあげてみたい。

『ザ・フェミニズム』(ちくま文庫)のなかで、当時東大教授・上野千鶴子女史(昨年3月退任)と医学博士で心理学者・評論家・小倉千加子女史が援助交際について対談している。

小倉 そしたら上野さんは、援助交際する女の子の気持ちもわかりませんか?
上野 わからないことはない。援助交際は、ただではやらせないという点で、立派な自己決定だと思います。しかも個人的に交渉能力を持っていて、第三者の管理がないわけだから。
小倉 いちばんかわいそうな女は愛人をやっている女ですよね。月々の手当をもらわずに、 自由恋愛で不倫をやっている女だと思う。
上野 男にただ乗りを許す女。昔だったら、浮気は男の甲斐性だったんだけれど、最近は甲斐性のない男も、女が自己責任をとってくれるので、愛人を持てるようになりましたからね。

さらに

上野 (時間の)配分ですよね。「私はあなたの所有物でない」ことを思い知らせるために金を取るんだ、と彼女(援交の女の子)は言うんです。
小倉 わかる。
上野 明解ですね。そうでないと男は図々しいから、どこまでもずるずるつけこんでくる。
小倉 それなら、援交も別に悪いことではないじゃないですか。
上野 悪いことではありません。
小倉 前は、悪いことだと言ってませんでしたか?
上野 援交の女の子は悪くない。けど援交男は悪い。


と続く。「援交と新・専業主婦は、家父長制につく白アリである」という小見出しがついている。
「私はあなたの所有物でない」ことを思い知らせるために金を取ると言い、援助交際は悪いことではないと宣う。
「人間はすべて平等である。成績の悪い生徒はすべて社会に責任があり、子供には責任は何もない。皆同じように努力したのだから、差はつけられない」と言って「オール3」や「オール5」を評価点とした「(日教組)先生」がいたことと通じるものを感じはしまいか。

「年上の世代は、いたずらに年下の世代にこびへつらってはならない」という、古くからの教えを否定し、若者に迎合しているように見えてならない。
この上野千鶴子女史、2011年12月17日朝日新聞での政治学者の宇野重規氏との対談では

日本ではいま、強いリーダーシップに対する追い風が吹いている。閉塞感を打ち破る改革者として石原慎太郎東京都知事、河村たかし名古屋市長を押し上げた力です。小泉純一郎さんの郵政選挙のときの旋風と同質のものでしょう。


と極めて適切なことも述べ、このままでは思考停止になるとも言っておられるのだが。
一方では、援助交際を「立派な自己決定だ」などとつい本音を喋ってしまう。
では、お前は援助交際をどう思うのか、と尋ねる方もおられるかも知れないので答えておこう。
「はしたない」の一言である。男も、女も。
ちなみに「はしたない」の意味を二冊の辞典からあげておく。

礼儀にはずれていて見苦しいさま。慎みがなく下品なさま。(『明鏡国語辞典』大修館)

人に不快な気持ちを起こさせるほど、また、自分自身の言動を省みて恥ずかしく思うほど品がない様子。(『新明解国語辞典』三省堂)


『新明解』がぴったりしていると思われる。

現在、日本がローマ末期の「パンとサーカス」(panem et circenses)現象に陥っていることについては、4月の金美齢先生との対談で、金先生のお考えを聞かせていただこうと思っているが、「パンとサーカス」について手短に説明しておく。
大衆の支持、人気を得るために政治家たちが働かない者にも「パン」を与え、時間をもてあました大衆が働く代わりにマス・レジャー「サーカス」を求めるという現象をいう。
ローマの市民大衆が働かずして無償の「パンとサーカス」を「権利」として手に入れることができるようになり、繁栄と福祉の絶頂に達したと錯覚していたときに、ローマ社会の芯は腐り始め、ローマ人の魂は衰弱し、ローマの没落が確実に始まっていたと言われている。

組織の崩壊は外敵によってではなく、中から起きてくることを歴史は教えてくれる。

今回の配信では大震災で「気になっていること」のもう一つを述べる予定だった。割り込む形にはなったが、私に毎回、学校教育の原点を教えてくれるKOTO COLLECTIONについて言及しておくことは重要な意義があると思い、短文を載せることにした。次回配信は「気になっていること」について述べたい。
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Appendix

プロフィール

marchan

Author:marchan
千葉 糺(ちばただす)
1947年生

東京理科大学大学院修了(数学・複素関数論専攻)
平成14年~18年度学習院中等科長・高等科長。任期満了の後、学習院高等科教諭(平成19年~24年度)を経て
学習院名誉教授。

(写真は雑誌『Shi-Ba』V.43
から。黒柴マーちゃん,
愛猫いっちゃんと)

国画会彫刻家 故・千野茂氏にデッサンを学び、その後テンペラ画を中心に個展、グループ展等開催。

時間を見つけて谷中「全生庵」坐禅会参加。日本ユダヤ学会会員。
2007年、イスラエルを中心に旅行。


最近の紀要論文
(1)『イエス・千日で世界を変えた男の受難』─「『事実』と『真実』というaporia」─
学習院高等科紀要第5号(学習院高等科 2007年)

(2)『イスラエル・灼熱の旅 リポート』─荒野の民から学ぶ─
学習院高等科紀要第6号(学習院高等科 2008年)

(3)『ナザレのイエスはキリストか』=二千年前の一ユダヤ人の死をめぐる過ぎ去ろうとしない「過去」=
学習院高等科紀要第6号(学習院高等科 2008年)
(4)『ユダヤ灼熱の旅リポート2』
─平和ボケの民と臨戦態勢の民─
学習院高等科紀要第7号(学習院高等科 2009年)
(5)『聖書への旅』─「生きること」の意味を探して≪マタイ受難曲を聴きながら≫─
学習院高等科紀要第8号(学習院高等科 2010年)
(6)「パリサイ派とは何か」─現代に問う
補遺 聖書を側面から理解するために
学習院高等科紀要第9号(学習院高等科 2011年)
(7)─横顔・一七世紀オランダ絵画・印象派─西洋絵画についての一考察
学習院高等科紀要第10号(学習院高等科 2012年)
(8)聖書が私に教えてくれること
─『イザヤ書』、コルベ神父、そして山本七平─
学習院高等科紀要第10号(学習院高等科 2012年)
(9)四十年を振り返る
学習院高等科紀要第11号(学習院高等科 2013年)
(10)『院歌の周辺』 ─安倍能成 信時潔 岩波茂雄 頭山満─(学習院高等科 2014年)
(11)『ヘブライ語で学ぶ創世記Ⅰ』「ノアの箱舟」
(12)『これからの教育はどうあるべきか 数学者・秋山 仁先生との対談』(学習院高等科 2015年)
─ 今まさに問われていること ─
(13)『国際化とInternationalizeの狭間で』
─その大いなる溝─(学習院高等科 2015年)
(14)『これからを生きるために』─未来志向の経営の理念─(学習院高等科 2016年)
(15)『地球儀を傍らに』─教職追放 地政学 国際法 民主主義─(学習院高等科 2016年)

(写真は死海での筆者,
シナイ山頂での夜明け)

「現代社会の問題を糺し未来の扉を開く会」

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