FC2ブログ

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://mar2002.blog92.fc2.com/tb.php/46-79b29b04

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

8月15日 終戦記念日に思う

8月15日
終戦記念日に思う


「裁判は人を強くする」とある弁護士の方が教えてくれたことを前回の最後に書くべきだった。改めて付記しておく。

8月15日午後4時過ぎに、まだじりじりと暑さが地面から吹き出しているような中、靖國神社に参拝した。たったこう書いただけで大きな反応を示す方が多いのは、十分承知の上で書いている。
英霊だとか御霊(みたま)とか、A級戦犯合祀だとか侵略戦争、外国人参政権等々、諸々の所謂右から左の主義・主張には何ら与したくない。ただ素朴に、私が見たことがない一人の人物に出会う場所のような気がするからである。今から67年前、そこで会えると思って死んでいった私の叔父に、その母つまり私の祖母の代参としてである。もっとも、もう二人は「あの世」で楽しく会話をしているだろうが。
「死んだら靖國で会える」と自らに言い聞かせて、命を落とした人たちの魂がそこにある、と信じて参拝に来られた方々だろう、礼をして柏手を打って、最後に頭を下げて…と流れるように動作が続く。
カトリックでも毎年参拝する方もいれば、正平協(「カトリック正義と平和協議会」)のような正反対のような組織もある。
私はただ、素朴にその人物の冥福を祈りたいだけである。

午後4時過ぎなのに九段下の交差点には、まだものものしい数の機動隊が立っている。坂を登る途中に、外国人参政権反対のグループがちらしを配っている。少し離れた場所には外国人にも参政権を、とメガホンで訴えている。小さな国旗を一人ひとり持ったグループもいる。皆それぞれ主義・主張があるだろうが、先に述べたようにどれにも与したくない。若い男女、一人で来たらしい女性、スーツを着た人、杖をついて来た老人、車椅子で介護の人と一緒の老人等々、静かで確固とした顔の方が多い。勿論、物見遊山的若者もいたが。短パンのいかにもアメリカ人といったグループもいた。
靖国01


私が会ったことのない叔父は、海軍航空隊に所属していた。所謂特攻隊を志願した人物らしい。
戦闘機の側で白いマフラーをキザに巻いたイケ面の写真が、祖母の部屋に飾られていた。
私が高校生の頃、彼が使ったらしい英和辞典やら数学の書き込みのある教科書を何冊か見つけたことがある。その足跡を詳しく調べてからもう十五年になる。

当時の厚生省の記録を防衛庁戦史部に何度か出掛けて調べた。係の方からもご協力いただいた。
「東方海面哨戒任務飛行中、敵潜水艦に爆撃後、自爆」と記録されていた。24歳とも書かれている。哨戒とは敵の来襲を警戒することと辞書にある。24歳独身で敵潜水艦に爆撃後、自爆して亡くなった、というのはあの写真の顔から何となく納得できた。祖母が随分可愛がった人と言うことは母から何度か聞いたことがある。母も会ったことはない。祖母は間違ってときどき、私をその叔父の名前で呼ぶことがあった。
華々しく散っていった、という印象をもって調べるのをそこで止めておけばよかったと後日、思ったことがある。私はさらに防衛庁戦史部に出掛け、戦史叢書「本土海軍作戦」を調べた。
そこには、「昭和19年5月の状況」という見出しで

北東方面 北千島方面への空襲は16回、延べ160機に達し、千島東方海上洋上監視艇隊は米機の攻撃を受け、5隻沈没、3隻破損の被害があった。米潜水艦は三陸方面を含め、行動活発となり、船舶の被害は沈没5、座州1を数えた。大湊警備府はオホーツク海への米潜水艦侵入に備え、7日 大湊空水偵4機を稚内に、25日陸軍直協機6機を樺太落合に進出させ、29日宗谷海峡第4機雷堰を敷設した。また厚岸92式機雷更新を9日に完了した。(中略)
10日 父島空水偵は4501船団の護衛中、父島北東で戦没潜水艦を発見して、これを爆撃し、至近弾1を与えた。次いで駆潜52号が26個の爆雷を加え、2個の猛烈な誘爆音を聞いて撃沈確実を報告した。



と言うように詳しくまとめられている。
その年の暮れ、防衛庁防衛研究所戦史部 菊田氏から資料が届いた。
『海軍下士官准士官・千葉 芳郎様は、昭和19年5月11日「2式陸上練習機)K10W)」に搭乗され「哨戒中敵潜水艦ラシキ油紋ニ対シ爆撃同地点ニ自爆戦死」されました。史資料を同封いたします。』とある。さらに菊田氏は飛行機が零式水偵機であったこと。当時の飛行機は特攻隊でも20%くらいは飛行そのものが困難だったと教えてくださった。

2式陸上練習機

2式陸上練習機


私の祖母は、最愛の息子が華々しく、米戦艦に体当たりして自爆死したと思って亡くなったはずである。それでいい。
しかし、事実は異なった。「自爆死」という「用語」は、実は飛行機が故障で操縦不能になって墜落、爆発等で死亡したときのことを指していると菊田氏は語った。
何秒かの間、おんぼろ飛行機が操縦不能になって海に落ちるまで、彼は何を考えていたのだろうかと思うときが今でもある。必死に助かろうともがいたのか、母の顔が浮かんだのか、あるいは恋人の顔か。
自分を呪ったか、国を呪ったか、無心の境地だったのか。

靖国03


私はただ、その叔父が安らかに眠ってほしいと素朴に祈るためにここ靖國国神社に来る。そういう素朴な気持ちで足を運ぶ人も多いはずである。もっと死者のことを考えるべきである。
最近、作家加賀乙彦氏が次のように語っているのが印象的だった。

今の日本人の気持ちは敗戦の時と非常に似ていますね。(66年前)何もなくなってしまった。全ては燃えた、破壊された。これから立ち上がるにはどうしたらいいかと言うと、技術立国しかない、と日本人は考えたわけです。科学の力しかないということで、まずはアメリカに教えを乞いに行って、アメリカに留学して向こうの技術を学び、だんだん日本の独自のものを出していった。テレビも自動車も原発も、そういう形で科学立国という何か一つの正しい平和な方向に動いたと思っていたら、なんと双六は元に戻ってしまった。また敗戦になってしまった。

66年後の新たなる敗戦。私たちはこの66年間について、右でも左でも上でも下でも、とことん、掘り起こし考えて今日の「敗戦」を分析・解釈すること。これが生きている者の死者への義務であろう。

暑い一日だった。
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://mar2002.blog92.fc2.com/tb.php/46-79b29b04

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

marchan

Author:marchan
千葉 糺(ちばただす)
1947年生

東京理科大学大学院修了(数学・複素関数論専攻)
平成14年~18年度学習院中等科長・高等科長。任期満了の後、学習院高等科教諭(平成19年~24年度)を経て
学習院名誉教授。

(写真は雑誌『Shi-Ba』V.43
から。黒柴マーちゃん,
愛猫いっちゃんと)

国画会彫刻家 故・千野茂氏にデッサンを学び、その後テンペラ画を中心に個展、グループ展等開催。

時間を見つけて谷中「全生庵」坐禅会参加。日本ユダヤ学会会員。
2007年、イスラエルを中心に旅行。


最近の紀要論文
(1)『イエス・千日で世界を変えた男の受難』─「『事実』と『真実』というaporia」─
学習院高等科紀要第5号(学習院高等科 2007年)

(2)『イスラエル・灼熱の旅 リポート』─荒野の民から学ぶ─
学習院高等科紀要第6号(学習院高等科 2008年)

(3)『ナザレのイエスはキリストか』=二千年前の一ユダヤ人の死をめぐる過ぎ去ろうとしない「過去」=
学習院高等科紀要第6号(学習院高等科 2008年)
(4)『ユダヤ灼熱の旅リポート2』
─平和ボケの民と臨戦態勢の民─
学習院高等科紀要第7号(学習院高等科 2009年)
(5)『聖書への旅』─「生きること」の意味を探して≪マタイ受難曲を聴きながら≫─
学習院高等科紀要第8号(学習院高等科 2010年)
(6)「パリサイ派とは何か」─現代に問う
補遺 聖書を側面から理解するために
学習院高等科紀要第9号(学習院高等科 2011年)
(7)─横顔・一七世紀オランダ絵画・印象派─西洋絵画についての一考察
学習院高等科紀要第10号(学習院高等科 2012年)
(8)聖書が私に教えてくれること
─『イザヤ書』、コルベ神父、そして山本七平─
学習院高等科紀要第10号(学習院高等科 2012年)
(9)四十年を振り返る
学習院高等科紀要第11号(学習院高等科 2013年)
(10)『院歌の周辺』 ─安倍能成 信時潔 岩波茂雄 頭山満─(学習院高等科 2014年)
(11)『ヘブライ語で学ぶ創世記Ⅰ』「ノアの箱舟」
(12)『これからの教育はどうあるべきか 数学者・秋山 仁先生との対談』(学習院高等科 2015年)
─ 今まさに問われていること ─
(13)『国際化とInternationalizeの狭間で』
─その大いなる溝─(学習院高等科 2015年)
(14)『これからを生きるために』─未来志向の経営の理念─(学習院高等科 2016年)
(15)『地球儀を傍らに』─教職追放 地政学 国際法 民主主義─(学習院高等科 2016年)

(写真は死海での筆者,
シナイ山頂での夜明け)

「現代社会の問題を糺し未来の扉を開く会」

検索したいキーワードを入力して、「検索」をクリック

Basic Calendar

<09 | 2018/10 | 11>
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

FC2ニュース

今日の天気は?


-天気予報コム- -FC2-
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。