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「タイガーマスク現象」を考える

「タイガーマスク現象」を考える
─「子どもの如き純粋さ」─


「タイガーマスク現象」

「タイガーマスク運動」というよりは、「タイガーマスク現象」と呼んだ方がいいと思われる「現象」が、昨年末から全国に広まっている。
昨年12月25日、群馬県中央児童相談所の玄関前にランドセル10個が入った箱が積み上げられ「伊達直人」からの手紙が添えられていた。それが報道されると神奈川、沖縄、岐阜など各地の児童相談所や児童養護施設にもランドセルや現金などが「伊達直人」の名で届けられるようになったというものである。
この「タイガーマスク」というのは、孤児だった主人公が覆面レスラーのタイガーマスクとなって活躍する漫画で、テレビアニメとしても69~71年に放映された。主人公が匿名でファイトマネーを自らが育った施設の子どもたちに寄付するという物語である。
新聞、テレビ等マスコミだけではなく、ついには国会議員まで論じるようになっている。
匿名のこの行為は、現在の荒んだ時代に心温まる話として話題になっている。内容は異なるが、二十数年前、『一杯のかけそば』という短編小説が国会で取り上げられ、映画化され人々に感動を与えたことを何となく思い浮かべてしまう(作者の詐欺的行為も後日話題になったが)。
1杯のかけそば01



朝日新聞は社説(2011年1月12日)で、「タイガーマスク―善意の文化を育てるには」という題で次のようなことを書いている:

突然の贈り物をどこの施設も歓迎しているようだ。子どもはどの色や形のランドセルが欲しかったか、もっと必要なものはなかったか。ニーズと食い違う場合もあろう。「いま何が必要か、施設に相談していただけると、よりうれしい。どういう人に助けてもらったか、顔が見えた方が、子どもの将来にとってもよいと思うのです」。都内で施設を運営し、全国児童養護施設協議会の副会長は、そう話す。


同じ日に毎日新聞も社説で「タイガーマスク 匿名の善意を見守ろう」という題で


「伊達直人」からランドセル5個が贈られた岐阜市の日本児童育成園には現在88人の子どもがいる。小学校入学時にランドセルを親族が準備できない場合は措置費の中の「入学準備金」(3万円余)で賄っているが、ランドセルは数千円から高額なものは8万円台まである。「学用品や衣服代なども必要なため入学準備金だけでは苦しい」という。
 「伊達直人」は寄付したのだろうか。いや、もっと軽い気持ちの人もいるかもしれない。それでも次々に登場する「伊達直人」を温かく見守りたいと思う。


と書いている。両紙とも寄付文化、思いやりの文化や精神を根付かせるにはどうしたらいいのかを考えるきっかけにすべきだと結んでいる。
これらの社説を書く人間は何歳ぐらいの人なのだろうか、とふと考えた。多分、中年ではないだろうか、「子どものような純粋さ」を失っていない中年層の人間ではないかと。私のこの推測はそれほどはずれているとは思われない。小さいときから素直ではなかった私には、今一つ、この「タイガーマスク現象」にはひっかかるものがあった。現在、その思いが次第に大きくなってきている。世の趨勢には反するが、以下、この社会現象について私の見解を述べてみたい。

「子どもの如き純粋さ」
ひっかかることはいくつかあるが、その中で最も大きなことは朝日新聞も毎日新聞も社説を書いた人物の「純粋さ」である。何も疑っていない、というよりはこの現象を「善意」として美談化し疑うなどということは微塵もないという、そこがひっかかるのである。人の「善意」は疑ってはいけない、子どものような純粋さを失ってはいけないと教えられて育った大の大人、中年が書いた社説である。
二千年前、パウロは

「物の判断においてあなたがたは子でもであってはいけない。悪事については幼い子どものように純真でありなさい。しかし、物を判断することにおいては一人前の者となりなさい」(フランシスコ会訳 「コリント人への第一の手紙」一四-20)


と言って、物の判断には大人になれと教えた。大人の見方、複雑な見方をすべきだと。
日本ではいい年をした中年が、「正義感」を振りかざす。子どもじみた単純なルールを声高に言う。なぜ、どの新聞もこうも画一的なのか。いや、正確には一紙だけ別のコラムが載っている新聞があった。
1月28日産経新聞、曽野綾子氏の「ほんものの誠実」という題のコラムである。火宅の家で育ったという彼女が書くことは、私には大いに頷けるものが多い。そのコラムの中で一つのエピソードが語られている。多少長くなるが引用してみる:

先日ある政府機関の人が北アフリカの途上国へ調査に行った話をした。そこでの滞在の最後の日に、同行の日本人とその国の首都第一のレストランで会食をした。
私はそのことを非難するのではない。日本人が衛生面を気にせずに食事のできるレストランは、途上国では実に数少ない。その値段はその国の人からみれば途方もないレベルだろうが、日本人からみたら手軽な費用で済む。
その時レストランの主人が「すみません。あなたからいただいたお金は、計算違いで多くもらい過ぎました。お返しします」と言って追っかけてきて金を返したということに、その日本人は感動していた。そういう正直な人がいる国とは将来もうまくいくだろう、と感じた、という。
その話を聞いた瞬間から、私は違和感を覚えていたが、その夜になってその原因を家で深く考えた時さらに不安感に襲われた。証明はできないが、これはそのレストランの主人の手の込んだ集客術だという可能性が実に高い。彼は外人向けのレストランの主人として仕事をしているうちに、どういう点を押さえれば、相手が喜ぶかを覚えたのである。つまり日本人はわずかな金額でも「おつりをごまかさない」ことを非常に高く評価すると知って、彼は常に多くもらい過ぎたと言って、正直を演出することにしたのだろう。


最後に彼女はこう述べている:

エイズで死んでいく人の孤独な臨終を見送り続けた神父は、彼自身、患者から感染した結核で亡くなった。しかしその神父といえども、人情的な場面など私に見せたことがない。命がけのほんものの誠実は、多分外部には見えない行為なのだ。



今回の「現象」は「タイガーマスク」なる人の、思いつきで行った行為かも知れない。悪いことではないのかも知れない。だが、なぜ無名でそっと行わなかったのか。「タイガーマスク」などと名乗ったのか。重要なことは地道に「継続」が出来るのかということではないのか。継続が出来ないことならば、期待している人々を裏切る、極めて無責任な一時的「楽しみ」ではないのか。
何故、大の大人が、燻し銀の中年が、社説として美談化するのか。何故、この現象を多面的に見るという大人の判断が出来ないのか。
「タイガーマスク現象」は、子どものまま大人になった日本人に、多くのことを示唆している現象のように思えてならない。





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プロフィール

marchan

Author:marchan
千葉 糺(ちばただす)
1947年生

東京理科大学大学院修了(数学・複素関数論専攻)
平成14年~18年度学習院中等科長・高等科長。任期満了の後、学習院高等科教諭(平成19年~24年度)を経て
学習院名誉教授。

(写真は雑誌『Shi-Ba』V.43
から。黒柴マーちゃん,
愛猫いっちゃんと)

国画会彫刻家 故・千野茂氏にデッサンを学び、その後テンペラ画を中心に個展、グループ展等開催。

時間を見つけて谷中「全生庵」坐禅会参加。日本ユダヤ学会会員。
2007年、イスラエルを中心に旅行。


最近の紀要論文
(1)『イエス・千日で世界を変えた男の受難』─「『事実』と『真実』というaporia」─
学習院高等科紀要第5号(学習院高等科 2007年)

(2)『イスラエル・灼熱の旅 リポート』─荒野の民から学ぶ─
学習院高等科紀要第6号(学習院高等科 2008年)

(3)『ナザレのイエスはキリストか』=二千年前の一ユダヤ人の死をめぐる過ぎ去ろうとしない「過去」=
学習院高等科紀要第6号(学習院高等科 2008年)
(4)『ユダヤ灼熱の旅リポート2』
─平和ボケの民と臨戦態勢の民─
学習院高等科紀要第7号(学習院高等科 2009年)
(5)『聖書への旅』─「生きること」の意味を探して≪マタイ受難曲を聴きながら≫─
学習院高等科紀要第8号(学習院高等科 2010年)
(6)「パリサイ派とは何か」─現代に問う
補遺 聖書を側面から理解するために
学習院高等科紀要第9号(学習院高等科 2011年)
(7)─横顔・一七世紀オランダ絵画・印象派─西洋絵画についての一考察
学習院高等科紀要第10号(学習院高等科 2012年)
(8)聖書が私に教えてくれること
─『イザヤ書』、コルベ神父、そして山本七平─
学習院高等科紀要第10号(学習院高等科 2012年)
(9)四十年を振り返る
学習院高等科紀要第11号(学習院高等科 2013年)
(10)『院歌の周辺』 ─安倍能成 信時潔 岩波茂雄 頭山満─(学習院高等科 2014年)
(11)『ヘブライ語で学ぶ創世記Ⅰ』「ノアの箱舟」
(12)『これからの教育はどうあるべきか 数学者・秋山 仁先生との対談』(学習院高等科 2015年)
─ 今まさに問われていること ─
(13)『国際化とInternationalizeの狭間で』
─その大いなる溝─(学習院高等科 2015年)
(14)『これからを生きるために』─未来志向の経営の理念─(学習院高等科 2016年)
(15)『地球儀を傍らに』─教職追放 地政学 国際法 民主主義─(学習院高等科 2016年)

(写真は死海での筆者,
シナイ山頂での夜明け)

「現代社会の問題を糺し未来の扉を開く会」

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